農と食のこと

佐久島産サツマイモの芋焼酎「sakushima~咲島~」

 「sakushima~咲島~」は、佐久島産のサツマイモで出来た本格芋焼酎です。佐久島で収穫されたサツマイモ「紅はるか」を全量使用。高い糖度と上品な甘さの紅はるかを贅沢に使いました。

 本格焼酎「sakushima~咲島~」が生まれるまでには、過疎化・高齢化の進む佐久島を盛り上げたいという島民の方々の願いと、その手立てとしてのサツマイモ栽培への挑戦、遊休農地を開拓した畑づくりなどの頑張りがありました。

「sakushima~咲島~」のここがポイント!

(1) 「おひるねハウス」をイメージしたラベル
「sakushima~咲島~」のラベル

 佐久島を訪れたことのある方ならだれもが気づく印象的なラベルは、島の人気観光スポット・「おひるねハウス」をイメージしたものです。

 佐久島を拠点とするNPO法人・若者自立支援塾ONESTEPと、愛知淑徳大学の学生団体が協同で企画。佐久島を訪れる方の思い出に残るよう、若い感性での企画を行いました。

(2) 安全・安心なサツマイモを使用
サツマイモ試験収穫(2017年10月)

 島を美しくつくる会が栽培管理を行っている佐久島クラインガルテンの畑では、化学農薬・化学肥料を使わない栽培を行っています。

 土壌の栄養分を補うため、10月のサツマイモ収穫後、緑肥として12月に同じ圃場で大麦を植え、畑へすき込みました。

 遊休農地からの栽培であるため、畑としての土づくりはまだまだ発展途上。年々土壌を向上させて、よりおいしいサツマイモを作るため、今後も工夫を重ねていきます。

(3) 米麹も西尾産米を使用、原料はすべて西尾
「コシヒカリ」の収穫(8月)

 「sakushima~咲島~」の米麹には、西尾産の米「コシヒカリ」を使用しています。

 原料となっているのは佐久島産のサツマイモとこの米麹だけ。100%地元産にこだわった、自慢の一品です。

(4) カクテルにも合う、すっきりとした味わい
「sakushima~咲島~」を利用したカクテル

 芋焼酎特有の「イモ臭さ」を抑えたすっきりとした味わい。ロックや水割り・お湯割り、カクテルなど、幅広い用途でお楽しみいただけます。

JA西三河による佐久島の農業振興策

佐久島の困りごと
佐久島の上空写真(2010年)

 佐久島は三河湾に浮かぶ島のひとつで、面積181ヘクタール・人口約225人(2019年2月現在)。現代アートや潮干狩りなどによる島おこしが有名で、年間観光客数10万人を数える、西尾市でも随一の人気観光地です。

 島民の方々は主にアサリを中心とする漁業・水産業や、観光客向けの民宿経営などで生計を立てています。しかし近年、アサリの漁獲量が下がり、その先行きが危惧されています。また島内で販売される名産品や土産物が少なく、観光客の増加が島民の収入と結びついていない面もあります。

 さらに、この島で課題となっているのが「耕作放棄地の増加による景観の悪化」でした。

 かつて1960年ごろ(昭和30~40年代)の佐久島では、ミカン・養蚕を中心に、サツマイモ・キャベツ・タマネギといった露地野菜の栽培が行われていました。しかし島の過疎化や高齢化から農家の数は減少の一途をたどり、1990年には専業農家の数がゼロに。かつての農地は耕作放棄地となり、荒地や沼地・森林になっています。

 現在では観光客の歩く道のすぐそばに荒地となった耕作放棄地がある場所もあり、これを問題視する意見や解決への要望がJA西三河には寄せられていました。

農地を拓くトラクター、景観保持に活躍
佐久島に寄贈されたトラクター 西尾市の榊原市長(左)へ目録を手渡すJAの名倉組合長(中央)、(2017年4月、当時)

 遊休農地の増加による景観の悪化は、観光業による島おこしをめざす佐久島にとって大きな問題でした。

 この解決の助けとなるよう、JA西三河は2017年4月、西尾市を通して佐久島へ農業用トラクター1台とフレールモア、景観植物の種等を寄贈しました。

 このトラクターは佐久島で遊休農地の耕起や、農作物や景観作物の植栽のための農地作り、サツマイモ栽培のための農地作りにも利用されています。

「島おこしのNEXTステージプロジェクト」への参画
イーストハウス 北のリボン

 島を美しくつくる会は2017年度より、佐久島への移住・定住・交流促進事業「島おこしのNEXTステージ」をスタートさせました。同プロジェクトは下記の3つの柱からなっています。

  1. 農産物の栽培から収穫体験と移住後の生活に結び付ける取り組み
  2. 古民家を利用した定住促進PRと島の自然体験ツアー
  3. 島民交流によるコミュニティの活性化と島の新たな「目玉」事業づくり

 プロジェクトには、西尾市・周辺市町の企業や市民団体・NPOなどが数多く参加しています。

 JA西三河は農業分野である「農産物の栽培から収穫体験と移住後の生活に結び付ける取り組み」に参画。その一環として取り組むこととなったのが、新たな名産品づくりとしてのサツマイモ栽培。「サクのいもプロジェクト」と題した名産品育成と、その加工品づくりを行うこととなりました。

めざせ「サクのいも」名産化、農業で佐久島を活性化へ
島民の皆さんによるサツマイモつるの植え付け(2017年5月)

 島を美しくつくる会とJA西三河・西尾市は、「サクのいもプロジェクト」と題して、佐久島でのサツマイモの生産・加工品作りと観光客向けの販売に向けて2017年度より活動しています。

 観光振興を島民収入につなげ、島の経済活性化とともに、魅力PRを通した定住拡大を行うことが狙い。これにむけてJAは、サツマイモの栽培計画作りと苗の調達、島民への栽培の普及と栽培指導、集出荷と販売ルートの構築などを担うこととなりました。

2017年度
初のサツマイモ収穫祭(2017年10月)

 取組1年目となる2017年度は、島の地質や気候に適するサツマイモの品種を選定するため、佐久島クラインガルテン北側の畑約4.5アールで栽培試験を実施。11月に様々な品種のサツマイモ約500キロを収穫しました。

 加工品作りに向けて9月、島民・JA・西尾市と相生ユニビオ(株)、愛知淑徳大学の学生らをまじえた検討会を開催。2018年5月には、初の試作品である佐久島産サツマイモを利用した芋焼酎の試飲会を開きました。

2018年度
佐久島店でのサツマイモ集荷(2018年10月)

 前年の試験結果を基に、品種を「紅はるか」一種に絞り込みました。佐久島クラインガルテンでの栽培面積を約10アールまで拡大したほか、島民7人が自らの畑でサツマイモを栽培し、約13アールの畑で約1.2トンを収穫しました。

 このサツマイモは10月にJA佐久島店で集荷され、碧南市にある相生ユニビオ(株)の醸造場へ納品されました。これは、佐久島からJAを通して行われた農作物出荷としては約30年ぶりのことでした。

 醸造と商品企画を経て、2019年3月には、佐久島産サツマイモを原料にした芋焼酎「sakushima~咲島~」が完成。2019年6月、ついに販売を開始しました。

2019年度以降
「sakushima~咲島~」の完成披露会(2019年3月)

 JAでは今後も、サツマイモつるの供給や島民への営農指導を通して、佐久島でのサツマイモ栽培をサポートします。芋焼酎「sakushima~咲島~」も引き続き製造するほか、サツマイモを利用した新メニューの開発、島内の飲食店での食材利用も目指します。

 また島民団体・西尾市との連携のもと、サツマイモに続く新たな名産品作りにも参画していきます。

佐久島の農業・サツマイモ栽培 関係年表

時期 できごと
1947年 このころ佐久島の人口が最多(1,643人)。以後、徐々に高齢化・過疎化が進行する。
1960年頃
(昭和30年代)
佐久島の農業最盛期。島内では70㌶の田畑で、ミカンや露地野菜・養蚕を中心とする農業がおこなわれる。
1988年頃 このころまで、一色町農協佐久島支店(当時)での農作物集出荷が行われていた。
1996年 佐久島で現代アートによる島おこしがスタート。
2005年頃 観光名所として島内に「おひるねハウス」「イーストハウス」などが作られ、観光客が徐々に増加する。
2017年4月 西尾市と島民団体「島を美しくつくる会」による「島おこしのNEXTステージ」プロジェクトスタート。
JA西三河と協力するサツマイモ生産による島おこしのほか、古民家を利用したイベントなど市内の企業・団体と連携した島おこしの取り組みが開始する。
2017年4月 JA西三河、佐久島の遊休農地対策として、西尾市を通して佐久島へ農業用トラクター一台を寄贈。
2017年5月 JA西三河・西尾市・島民団体により、佐久島クラインガルテン北側の圃場4.5アールでサツマイモ栽培を開始。
2017年11月 初のサツマイモ収穫。合計500キロのサツマイモを収穫する。
2018年5月 (株)相生ユニビオによる芋焼酎の試飲会。
2018年5月 サツマイモ栽培2年目スタート。佐久島クラインガルテン北側の圃場10アールでサツマイモを栽培。
JA、佐久島の住民へのサツマイモ栽培普及と栽培指導を開始する。
2018年9月 サツマイモ収穫祭。佐久島クラインガルテン北の圃場でサツマイモ約0.6トンを収穫する。あわせて島民が栽培したサツマイモ0.6トンを佐久島店で集荷。
合計1.2トンのサツマイモをJA西三河が買い取り、芋焼酎の原料として(株)相生ユニビオへ納品する。JAによる約30年ぶりの佐久島産農産物の出荷。
2018年12月頃 NPO法人ONE STEPと愛知淑徳大学CCCの学生団体が、佐久島産サツマイモを使った芋焼酎のラベル等を企画する。
2019年3月 佐久島産サツマイモの芋焼酎「sakushima~咲島~」が完成。披露会をJA本店と佐久島で開催する。
2019年6月 芋焼酎「sakushima~咲島~」発売。